2017年8月30日水曜日

胆礬を作る

 胆礬(カルカンサイト,chalcanthite)とは,天然に鉱物として存在する硫酸銅五水和物のことです.実家で暇な時間が多く,複雑な実験をする設備もないので原始的に何か作ろうと思ってやりました.

 胆礬は硫酸銅ですからまずは銅が必要です.スタート物質として銅鉱石の珪孔雀石を使いました.セリアに売ってます.

 セリアの石は品質に偏りがありますが安いのが強みです.できるだけ青いものを選びました.まずは砕きます.ケースの裏に「加工しないでください」って書いてあった気もする.


 もうきれい.かなり脆く,簡単に砕けました.乳鉢乳棒がなかったので庭にあったコンクリートの円柱で砕きました.できるだけ細かくします.

 珪孔雀石では銅はケイ酸塩の状態で含まれています.これに硫酸を作用させれば弱酸の遊離により硫酸銅ができるかと思いますが,よく知っている酸化物と酸の反応にしたかったので強熱して黒色の酸化物にしました.


 銅が用意できたら次は硫酸.実は諸事情により実家に希硫酸を持参していたのですが,銅鉱石から銅を得たので硫酸の方も原始的に行こうと思いました.そこで,硫黄を採取するために硫化水素香る山へ.


 何もとれなかったので結局帰りに寄った本屋の鉱石コーナーで自然硫黄を購入.硫酸イオンを得るためにこの硫黄を燃やして二酸化硫黄を作ります.二酸化硫黄は非常に刺激性の高い気体で,解放された空気中で硫黄を燃やし続けると永遠に二酸化硫黄を発して辺り一面地獄と化します.そのため,酸欠で硫黄の燃焼がすぐに終わるような反応容器を作ります.

 ・・・熱に弱そうだし密閉もそんなにできない容器ですがまあ十分です.あぶないです.
 ボトルの中にはプラ容器(先に作った酸化銅と水を入れたもの)と硫黄を乗せた素焼きのかけらが入っています.中の硫黄に点火してから容器に蓋をして密閉し,硫黄の燃焼が終わるのを待ちます.


 燃焼すると容器内は白色で有毒な二酸化硫黄で満たされます.容器の隙間から逃げたり水にとけたりして容器内の二酸化硫黄が消えたら銅入りのプラ容器をとり出し,しばらく放置.これで水に溶けた二酸化硫黄(亜硫酸と平衡)と空気中の酸素が反応し,硫酸と亜硫酸が平衡状態になります.生じた硫酸が酸化銅と反応して硫酸銅を作ってしまえばさらに亜硫酸から硫酸が作られることになります.実際に,硫黄を燃やす→空気に触れさせるの操作を繰り返すと無色だった溶液は緑色に変化していきました.
 
 硫酸銅の水溶液は青色ですが,そこに何らかの褐色水溶液を作る成分(鉄イオンなど)が混ざると緑色に見えます.この溶液をろ過してろ液を得ました.

 緑色になるのは鉄イオンだと思っていたのですが,これを一晩放置しておいたら溶液が青色になり,白色の沈殿が生じたので結局緑色の正体はよくわかりませんでした.

 でも目的の硫酸銅水溶液っぽい色になったので良し.溶液を自然乾燥させると,白色の不純物と目的の硫酸銅の結晶が分かれて析出します.

 ここからできる限り青い部分のみ集めて再び少量の水に溶かし,自然乾燥により結晶を作ります.これで胆礬の完成.


 すごく小さいけど,できた!うれしい!




0 件のコメント:

コメントを投稿