2016年11月12日土曜日

マグネトロンの整流作用

 今回の実験はおずし(人名)考案のものです.

おずし(Leptothrix sp.)

 随分前に,おずしが「マグネトロンは磁石を取り除けば整流管として使うことができるのではないか」と唱えました.マグネトロン(Magnetron,磁電管)とは電子レンジの中にいるマイクロ波管のことです.マグネトロンの構造の話はここでは省略します(気になる人は調べてみてください)が,確かに磁石がなければ一般的な整流管とそう変わらない構造をしています.そんでもって彼が実験するというので,マグネトロンを2つ預けておいたのですが・・・

 えぇ・・・.なんか凹んでるんですけど・・・.
 磁石を無理やり破壊したところ,マグネトロンが凹んでしまったそうです.結果,見事にヒーターと陽極が導通してました.

 もう一つのマグネトロンは手付かずであったため,私が丁寧に(?)外装を破壊し,マグネトロンを傷つけないように磁石を外すことに成功しました.北風と太陽ですね.

 整流作用があるかどうかを調べるため,以下のような回路を組みました.

 マグネトロンのほかに,半導体のダイオードを用いました.もしマグネトロンに整流作用があるのならば,マグネトロンとダイオードを同じ向きに接続すれば電球に電流が流れ,マグネトロンとダイオードが異なる向きに接続されていれば電球に電流は流れないはずです.

 ちなみに,マグネトロンのヒータートランスは電子レンジの高圧トランスの2次側を改造して作りました.おおよそ5V出力するようになっています.

結果
 まずマグネトロンと半導体ダイオードを同じ向きにして動作させてみました.

 電球は光っていませんが,電球の両端に1Vほどの電圧がかかっていました.これにより,少しだけではあるものの電流が流れていることがわかりました.

 では,次にマグネトロンと半導体ダイオードを逆方向に接続した結果を見てみましょう.

 まあどっちにしたって電球は光らないんですが,今度は電球に電圧がかかっていないことがわかります(写真では少し見づらいですが,テスターの針がふれていません).よって,この場合は電球に電流は流れていないことがわかりました.
 
 以上より,
・マグネトロンと半導体ダイオードを同じ方向に接続すると電流を流す
・マグネトロンと半導体ダイオードを異なる方向に接続すると電流を流さない
 ということがわかりました.どうやらマグネトロンには整流作用があるようです.また,最初の実験結果から,マグネトロンを整流管とした際には電圧降下が随分と大きいように思えますね.

 整流作用がありそうだとわかったところで解放電圧を測ってみました.

 結果,解放電圧は40Vくらいであることがわかりました.


 ちなみに波形はこんな感じ.

 5V/divです.適当に見たので中心の軸が0Vではないです.最終的にオシロスコープ使うならなんではじめにあんな回りくどい実験してたのかわかりませんね・・・.

 以上より,とりあえずマグネトロンは整流管として使えなくもなさそうなのですが,電圧降下が大きいことや,磁石を剥がす過程で放熱板を取り去ってしまっているためにマグネトロンの温度が上がりまくるなどの問題点があります.
 電圧降下に関して.今回は適当にヒーター電圧を5Vにしましたが,もしかしたら足りなかったのかもしれません.また,マグネトロンは本来,(磁場で電子の進路を曲げているとはいえ)2kV程度の高電圧で用いるものです.そのため,陰極(直熱管のためヒーターと同じ)と陽極が随分と離れており,これが電圧降下を大きくしている原因ではないかとも考えています.それを考慮すると,今回のような低い電圧で使うよりも,高い電圧で高圧整流管として用いる方がよいと思います.高電圧かつ小電流であれば熱に変わるエネルギーも少なく,温度の問題を抑えられそうです.
 温度の問題に関しては,放熱板を付け直す,あるいは金属パイプを巻いて水冷にする,などの解決策が考えられるでしょう.ヒーターを点灯するだけでもかなり高温になり,使用後の陽極に水滴を垂らすと一瞬で蒸発するくらいアツアツだったのでどうにかしたいですね.

 以上の課題をクリアすれば整流管として問題なく使えそうですが,私は普通の整流管を使うことにします.


 おまけ
 ひなっちょたちが出演しているドラマに影響されて鶏のコンフィを作った.

 低温調理が面倒だったけどおいしくできた.うれC.


 
 それでは,До свидания.