フェリシアン化カリウム(ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウム,赤血塩)は化学式K3[Fe(CN)6]で表される化合物で,結晶は赤色,水溶液は黄色の塩です.
また,フェロシアン化カリウム(ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウム,黄血塩)は K4[Fe(CN)6]で表され,淡い黄色の結晶です.動物の血液や臓器と草木の灰とを混ぜて加熱するとできるらしい.
左の図がフェリシアン,右の図がフェロシアンです.カリウムイオンの数が違っていますね.中心のでかい塊は同じように見えますが,実は真ん中の鉄の酸化数が異なり,中心の電荷が両者で異なることから,その周りにくっつくカリウムイオンの数が異なっています.中心の鉄の酸化数はフェリシアンでは
Fe3+ ,フェロシアンでは
Fe2+ となっています.つまり,
フェリシアンをフェロシアンに変える場合,還元剤で還元してやればよいことになります.(まあどっちも写真屋で買えるんですけどね.)
今回実験するにあたって,以下の動画を参考にしました.
参考にした動画では以下のような反応を用いて還元を行っています.
2K3[Fe(CN)6] + 2KOH + H2O2 → 2K4[Fe(CN)6] + 2H2O + O2
しかし手持ちにKOHがなかったので炭酸カリウムで代用しました.多分塩基性にできてカリウムを供給できればなんとかなるだろう,という考え.炭酸カリウムを用いると反応式は以下のようになります.
2K3[Fe(CN)6] + K2CO3 + H2O2 → 2K4[Fe(CN)6] + 2H2O + O2 + CO2
おっと,出てくるガスの種類が増えましたね.炭酸塩を用いるので二酸化炭素が出ます.実はこれが問題で,この反応は参考にした動画のようにうまいこといきません(後述).
反応式ができれば実験開始.フェリシアン化カリウム20.00g,炭酸カリウム4.20g,精製水23g測りとり1Lビーカー中で混ぜました.気体が出る反応では余裕をもって大きめの容器を用いると良いです.
フェリシアン化カリウムは結晶真っ赤なのに水に溶かすと蛍光イエローなのが不思議.
すべて溶解させた後,オキシドールを添加していきました.40g程度加えたあたりからpH試験紙でpHを確認し,中性になるまでオキシドールを加えました(40~45g程度).酸素と二酸化炭素が出る反応ですから,オキシドールを加えるとしゅわしゅわします.
溶液の色が変わっていることから,確かに何かしらの反応が起こっていることがわかります.
最後に水を蒸発させて結晶を得ます.加熱して水を飛ばしたいところですが,実は生成物のフェロシアン化カリウム,高温で二酸化炭素と反応します.前述のとおり,本実験では炭酸カリウムを用いているために二酸化炭素が生じ,溶液中に溶けている状態です.この状態で加熱するとせっかく作った生成物が分解して元のフェリシアン化カリウムに戻ってしまう・・・ということで,じれったいですが室温で水が飛ぶのを待つことにします.ビーカーにシリカゲルのパックを洗濯ばさみでひっかけ,ラップをかけて放置.シリカゲルの交換を怠ったため乾燥に3か月くらいかかりました.
できたものがこちら
なんだこりゃ
半分くらいフェリシアンに戻ってるように思えます.溶液中に二酸化炭素がいると室温でもじわじわ反応しちゃうみたいですね.やっぱり炭酸塩じゃだめだわ.
結論
炭酸塩での代用ダメ,ゼッタイ.
でも一応目的の反応が起こっているのは確認できたので良しとしましょう.このように,過酸化水素は酸化剤だけではなく還元剤としての性質も持ちます.高校化学の教科書の酸化剤の欄と還元剤の欄両方に過酸化水素がいるのはこういうワケなんですね.
以上!ベベンッ