今日はレーザー光源から一部の偏光の光を取り出す実験の話です.
特定の偏光をカットする物として偏光板が有名です.偏光板を通すことである方向の偏光の光のみを通すことができますが,これを偏光板なしで行う方法があります.それは,ガラスに56°の入射角でレーザー光を入射することです.後で述べますが空気より屈折率が高い物質であればガラスでなくとも同じ操作をすることができます(その場合は入射角が変わる).
とりあえずやってみましょう.ほい.
レーザー光をスライドガラスに反射させ,偏光板を通じて反射光をスクリーンで観察します.ガラスに反射させることで偏光が一方向になっていれば,偏光板を回転させることで光が通らなくなる場合があるはずです.
それでは,レーザースイッチオン
偏光板を90°回転させてみる
偏光板の向きを変えると,上の写真のようにスクリーンに映る光の強度が変わりました.また,もともとのレーザーが含む偏光が既に偏っているので,レーザーポインタを回転させても同様の現象が起こるか確認したところ,やはり同じ結果でした.
しかし,この条件で暗くはなったもののどうしても完全に光をカットすることはできませんでした.
また,56°以外の角度でも実験してみました.56°で光が暗くなる偏光では他の角度でも暗い傾向がありました.ガラスに反射させるだけで偏光の内訳が結構偏ることがわかりました.
解説
光を電磁波としてこの実験について考えてみました.電磁波というのは下の図のように,電場が上下に振動しながら進む波動です.実際には電場と垂直に磁場も振動しています.
波動の進行方向を軸として,上下する電場を含む平面がどれくらい傾いているか?というのが偏光です.(要するにどれくらい傾いた状態で進んでいるのか)
通常,そこらへんにある光は様々な偏光の光を含んでいます.今回の実験ではそれらが混ざった状態の光をガラスに入射させたのでした.ここで,入射した光を以下のようなP偏光・S偏光という2成分に分けて考えてみることにします.
言葉で説明しづらいですが,S偏光では電場が境界面と平行に振動しています.S偏光を90°回転させたものがP偏光です.この2種類の偏光はいろいろと性質が異なっています.そこで,マクスウェル方程式とか境界条件とかをいろいろいじっていると,P偏光については反射率が0になる入射角が存在することがわかります.それをブリュースター角と呼び,以下の式で求めることができます.
n1は入射する側の媒質(本実験では空気)の屈折率,n2は透過する側(本実験ではガラス)の屈折率です.簡単な式ですが導出は気絶するほど面倒くさいのでここではやりません.理科年表曰く空気の屈折率は1.0,ガラスの屈折率は1.5くらいということですからそれらを代入してやります.
ということで,入射角θが56°のときにP偏光の反射率が0になる,つまりP偏光の光はすべて透過してしまうことになります.
ではS偏光はどうでしょうか.実はS偏光の光はブリュースター角を持ちません.これはP偏光とS偏光とでは反射率の式が違う形をしているためです.P偏光のブリュースター角56°ではS偏光の反射率Rs及び透過率Tsは以下のように求められます.
ブリュースター角の条件 θb+θt=π/2 を用いました.
以上よりこの角度ではP偏光は反射せず,S偏光も反射率は14%程度ということがわかります.
ちなみに釣り用品の偏光グラス(水面下のおさかながよくみえる)はこれを利用しています.
以上よりこの角度ではP偏光は反射せず,S偏光も反射率は14%程度ということがわかります.
ちなみに釣り用品の偏光グラス(水面下のおさかながよくみえる)はこれを利用しています.
結論として,ガラスを用いることでP偏光を大幅にカットできていたと思いますが,手持ちの偏光板はどっち向きにスリットが入っているのか忘れてしまったので,「どちらかの向きの偏光が大幅にカットできた」ということにしましょう^^;
また,どうがんばっても完全に光をカットできない問題については,どうがんばってもよくわかりませんでした.多分古典的な電磁気学ではわからない部分が絡んでいるのだと思います.多分.
また,どうがんばっても完全に光をカットできない問題については,どうがんばってもよくわかりませんでした.多分古典的な電磁気学ではわからない部分が絡んでいるのだと思います.多分.
よくある質問
Q.前回の更新から1か月開いてたけどこれだけ?
A.ウン